今回のCheer*fullWomanインタビューでご紹介するのは、神戸元町で食料品店「NEIGHBOR FOOD(ネイバーフード)」を営む安藤美保さん。
添加物の少ない可能な限りオーガニックの食品、近郊で採れた農産物、自家製のお総菜、スイーツ、加工品を店舗販売する傍ら、神戸市と神戸の農家・加工者がタッグを組んだ「EAT LOCAL KOBE」、里山親子教室「里がワンダーランド(NPO法人風の楽舎)」、子どもの孤食問題に取り組む「こどもキッチン」など、食を通して生産者と消費者を結ぶ橋渡し役として様々な活動に取り組まれています。その原点となる「食」への思いをお聞きしました。
もともと食のお仕事を?

昔から食べることが好きだったんです。大学卒業後OLをしていたのですが、手に職をつけたいなと思って、レストランやワインショップ勤務を経てフードコーディネーターになったのが25年前くらい、雑誌やカタログのフードスタイリングや企業向けのレシピ作成などの仕事をし、結婚後、料理教室中心の活動に。食に対して大きく考え方が変わったのは、15年ほど前に体調を崩してマクロビオティックに目を向けたのがきっかけです。学校(正食協会)で学び、畑を借りて野菜を育てたりもしました。
マクロビオティックって?

マクロビオティックとは具体的に言うと玄米菜食中心の食事法で、基本的にお肉やお魚は食べません。その根底には「一物全体」や「身土不二(しんどふじ)」という考えがあります。「一物全体」というのは、命を丸ごといただくという考えで、例えばお米でも精米せず玄米のまま、まるごと食べるとすごく栄養もありますよという意味。人参は捨ててしまう皮の方が栄養があるんです。「身土不二」は人間の身体は、その土地でできた食べ物と密接な関係があって、身体と土地は二つに分けられないという意味。これが地産地消という考え方と繋がっているんです。地元で採れた食べ物を丸ごと食べることで身体の調子を整え健康に生きよう、そういうのがマクロビオティックの考え方です。
ただ、皮まで食べる、まるごと食べるなら無農薬や、無化学肥料で栽培されたいわゆるオーガニックの野菜や食材を選びたいところなのですが、体に入れるすべての食物をオーガニックにすることは、今の社会ではなかなか難しく、生きづらくなることが多いので、もっとおおらかに取り組むようにしています。学校で勉強していた時は、厳格にマクロビオティックの考えに基づいた食事をしていた時期もありますが、今は可能な限りオーガニックなものを取り入れ、お肉や魚もいただいています。
マクロビオティックというのは単に食事法ではなく、「一物全体」「身土不二」の考え方をもとにした哲学みたいなものがあって、健康な体を作るための食生活の先には、健全な環境を作り、守ることへつながっていると思っています。
お店をオープンしたきっかけは?

15年ほど前に自宅で料理教室を始めた頃に知り合った農家さんから、採れすぎた野菜を大量に捨てるという話を聞いて、農家の方が大変な思いをして作った作物が捨てられたり出荷できなかったりするのはとてももったいないって思ったんです。それを少しでもいいから買って加工品にして消費者の方に届けることで応援できたらと思いました。ですが、加工品を製造し、販売するためには設備が整った場所で作らないと保健所の許可が下りないんです。そこで2010年8月、芦屋にマルメロというスペースをオープンし、そこで加工品の製造、販売や料理教室をしました。(その後マルメロは元町に移転し2017年閉店、2014年より現在のNEIGHBOR FOOD開業)
オープン当初から、お客様においしいもの、体に良いものを届けられたらと、できるだけオーガニックの商品を集め、自家製のお総菜やお菓子に関しては添加物や保存料を一切使わず手作りで、良い調味料を使ってできるだけ素材の味を生かしたものをお届けするよう、心がけています。
お店の他に力を入れている活動は?

いくつかありますが、どれも街と里山をつなぐことをベースにしたものです。
一つ目は、10年ほど前、当時借りていた市民農園で知り合った仲間と立ち上げたNPO法人風の楽舎という組織で、『里がワンダーランド』という親子対象の里山プログラムを開催しています。篠山の地元の公民館を利用させてもらい、近隣の農地を利用して月に一度、畑や田んぼでの作業の他、陶芸や木工をしたり、石窯でピザを焼いたり…自分も一緒になって楽しんで活動しています。
二つ目は、毎週土曜日、神戸市役所の南側にある東遊園地で開催しているEAT LOCAL KOBEファーマーズマーケットです。地産地消の新しいプラットフォームとして始まった神戸市と共催のこの取り組みは、神戸に住む人が神戸の野菜を買える場、新規就農の若い農家さんが栽培した野菜を販売する場として、その野菜や果物を使った加工品などを販売するお店、飲食店など様々な立場の人が、一緒になって取り組んでいます。この春から6年目を迎えるこの活動に設立時より事務局に所属しています。
また、このEAT LOCAL KOBEの活動のひとつで3年ほど前から、いわゆる子ども食堂として、「こどもキッチン」をしています。場所柄、御商売をしている家庭が多く、一人で晩御飯を食べているような孤食の子どもたちと、一緒に作って一緒に食べる時間を提供してきました。現在は、北野にあるファーマーズマーケットのリアルショップであるFARMSTANDにて「北野こどもキッチン」という名前で継続しています。
三つ目は、今ちょうどお店に飾っているチューリップの産地でもある神戸市北区に広がる里山地区、淡河(おうご)で地元の方と一緒に、過疎化と高齢化で荒廃した竹林を活用するため、「淡河バンブープロジェクト」という組織を作り、地元の方と一緒になって取り組んでいます。竹って成長が早くて、すごい勢いで生えてくるんです。竹林が荒れるとそこを猪が住処にして近くの畑を荒らしに来たり、地下茎が伸びて人家の中に土台を破って竹が生えてきたりするんですね。竹には色々使いみちがあるんですが、今はあまり利用されてないので竹林が放ったらかしになっていて。それをなんとかするために、1~2m位に育った竹からメンマを作ったり、竹細工としてカゴを編んだり、今年は竹炭を作ろうという声が出たり…整備などの活動にはどうしてもマンパワーが必要なので、いろいろなきっかけで竹に興味をもってもらって、一緒になって参加してくれる街の人を里山に呼び込むことができればと考えています。
今後の活動について

自分のやっていること、食を通して、持続可能な社会を作っていく一役を担えたらと思って日々活動しています。いろいろやりたいことはあるのですが、自分の暮らしを見つめなしたいなとも思っています。
最後に阪神沿線でお気に入りの場所を教えてください

ごちゃごちゃした感じの残る元町が好きです。うちの斜向かいにあるワインショップ「Jeroboam(ジェロボアム)」は夫が経営しています。トアウエストには「ヴェッキア・スプーニャ」というイタリアンのお店もやっていて。古い木を利用した落ち着いた内装で、女性1人でも気軽に来やすいお店です。イタリアで修業したシェフが素朴な地方料理をナチュラルなワインと一緒に楽しんでいただくというコンセプトで、おすすめです。
インタビューを終えて

店名のNEIGHBOR FOODは「ご近所さん」を意味するneighborhoodをもじってつけられたものだそう。1階の店舗には神戸近郊や淡路島で採れた野菜や国内外から仕入れた選りすぐりの調味料、店舗2階のキッチンで作られた総菜、スイーツが並んでいます。お客さんは普段から健康に気を使っている40代以上の女性が多いのだとか。
レジの横にはお客さんが「レジ袋の代わりに使ってほしい」と家から持って来られた紙袋が置かれていました。こうした小さなことから使い捨てでないモノの循環の輪が広がっていくといいですね。
インタビュー/チアフルライター やまさん
[参考]
EAT LOCAL KOBE
EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET
開催場所:神戸市中央区東遊園地
開催日時:
毎週土曜日(各シーズン10回/年間40回)
9時~12時半(冬期のみ10時~13時)
*開催日はFacebookページでご確認ください。
https://www.facebook.com/eatlocalkobe/
FARM STAND
アドレス:神戸市中央区山本通1-7-15
営業日時:毎日 9:00〜18:00
HP:http://eatlocalkobe.org/farmstand/
NPO法人 風の楽舎