科学館でプラネタリウムの解説を担当する学芸員さん

今回のCheer*full Womanインタビューは、大阪市立科学館 学芸員の西岡里織さんです。
大学時代に自然科学を幅広く学び、科学館ではプラネタリウムの解説も担当しています。
そして、彼女はなんと!空飛ぶ学芸員なのだとか!その魅力に迫ります。
学芸員4年目は初めてづくし

美術館・博物館担当チアフルライターの甲斐千代子です。今回が初めてのインタビュー取材。
お相手の西岡さんは、少しはにかみながら、人懐っこい笑顔で登場です。科学館に通い詰める甲斐は初対面ではありませんでしたが、じっくりお話を伺うのは初めて。ドキドキワクワクしながら、インタビュー開始です。
甲斐:学芸員4年目はいかがですか?
西岡:初めてのことがたくさんありました!
大阪市立科学館は昨年春にリニューアルしました。プラネタリウムと4階の展示が新しくなりましたが、いくつかの展示の更新を担当しました。何をどうするのか業者さんと相談しながら形にし、展示の解説文も考え、完成した後は細かな改善も加えて…
今まではすでにある展示を担当していましたが、一から作るというのは初めてでした。担当したお天気コーナーや月の満ち欠けの展示は、見るだけではなく体験してもらうこと、実物を見てもらうことにこだわりました。
空飛ぶ学芸員!

甲斐:HPで拝見しましたが、専門は「天気」なんですね。
西岡:宇宙の勉強ももちろん大学でしましたが、身近に起こる現象を学べるということで研究室は天気を選びました。空を見ることが大好きです。
甲斐:ということは、趣味もやっぱり天気?
西岡:熱気球…
甲斐:へ!?
西岡:熱気球ってすてきですよ!!
熱気球との出会いは、大学入学後の新入生のクラブ・サークル勧誘の時、熱気球部から勧誘を受けたのがきっかけです。話を聞くうち、楽しそうだなと思いました。でも吹奏楽にも興味があって。結局吹奏楽部に入部し、熱気球クラブには入りませんでした。が、クラブの先輩がとても気さくな方で、夏休みに北海道で開催される大会に一緒に行かないかと声をかけてくれて。車に荷物を積み込み、フェリーで北海道に向かいました。フェリーには大会に参加する他大学の人たちがたくさんいて、とても楽しかったです。
そして大会会場に着き、初めて熱気球に乗せてもらったとき…当然なんです、当然なんですけど、自分の乗っているバスケットがふわっと浮いたんです!!そのときの感動は忘れられません。大学卒業後もクラブの先輩にはお世話になっています。現在はまた別のチームのメンバーとして、熱気球の大会に参加しています。熱気球はエンジンもなく、バーナーで上下するだけです。移動は風任せ。もちろんはじめに風をみて、風の状態をよんでいるんですけど、こういう経験もあって天気に興味を持つようになりました。天気の研究室を選んだ一つのきっかけとなりました。
科学館の学芸員のお仕事

甲斐:科学館の学芸員はどんなお仕事なんですか?
西岡:基本的には資料の収集と保管、調査研究、展示、普及教育活動というのが柱ですが、美術館などとの違いもあるんです。
科学館には、国宝や重要文化財はありませんが、館長は「科学館は学芸員一人一人が国宝や」ということをよく言っています。学芸員一人一人が科学館の財産であり、専門分野、個性を生かしてよい仕事をするということなのですが、たくさんの方に科学の楽しさを伝えられるよう、頑張らねば!と改めて感じます。
具体的には、プラネタリウムの投影、館内展示、科学に関する記事の執筆、イベントの企画・実施と盛りだくさんです。今(2019年12月~2020年3月1日)投影しているプラネタリウムプログラム「夜空の宝石箱『すばる』」は、初めて主担当になりました。メインで制作したんです。ストーリーを考え、映像や音楽を選び編集して、先輩方にアドバイスをもらいながら仕上げました。すばるは、子供の時祖母に「はごいた星」と教えてもらって以来思い入れも大きかったので、人と星の関わりについても盛り込みたいと思いました。
自然と戯れた子ども時代 自然科学に興味を持ったきっかけ

≪写真:スバルとラブジョイ彗星 撮影:戸次寿一≫
甲斐:星が好きになったのはおばあさまの影響?
西岡:きっかけの一つだと思います。
子どものころ、祖母が空に輝く「すばる」を指さして、「あれは、『はごいた星』」だよと教えてくれました。一緒にどんぐり拾いに行って、しいの実は食べられるよって教えてもらって、その場で食べたりも。家族みんな自然が好きで、日常とか遊びの中で星を見たり、空を見たり、天気の話とか、自然と触れ合ったりしていたように思います。冬もスキー場ではなく、山の雪の積もっているところで、雪遊びやそり滑りをしました。祖父の家も山に囲まれたところにありますし、そんな環境で育ったからかもしれないですね!
お客さまの世界が広がるきっかけを作りたい 感謝のことばが一番の励み

甲斐:仕事をしていてどんな時やりがいを感じますか?
西岡:お客さんに「ありがとう」といわれる瞬間です。
プラネタリウムの投影のあとお客さんから「面白かった」「ここがよかった」「ありがとう」と声をかけてもらえた時、良かったと思います。プラネタリウムもそうですが執筆作業など、伝える仕事が多いんです。ただ、この「伝える」ことが難しくて。どうすれば分かりやすいか、興味を持ってもらえるか・・・日々、試行錯誤です。展示場にも足を運んでお客さんと話をすることも大好きです。自分が発信したことが直接的でも間接的でも、まわりまわって、お客さんの心に響き、その方の世界が広がるきっかけになればうれしいです。特に子供たちはこれから可能性は無限大!!!ここにきて色々体験してもらうことで、私が、たくさんの人から教えてもらったように、その道(自然科学)に進まなくてもいいので将来に向けて世界が広がるきっかけづくりのお手伝いができればなと思います。
甲斐:(うれしそう~)ところで専門分野は今後どのように?
西岡:専門分野に関しては…
今、出身大学でもある大阪教育大学の先生と協力して大阪のお天気、大気の状態などの観測をしています。データを集め解析し、いずれは大阪の天気変化の特徴を調べたり科学館の展示にも生かしたりしていきたいです。自分たちが住んでいる町の天気情報を発信することでもっと天気の変化や雲の状態、雨の降り方など、天気を身近に感じてもらいたいです。なかなか難しいんですけど…頑張ります。
六甲山とルミナリエが好きです♡

甲斐:科学館は福島駅からほど近い場所にありますが、阪神沿線でお気に入りのスポットなどはありますか?
西岡:実は…六甲山とルミナリエが好きです。
甲斐:景色がきれいですものね。
西岡:あの、六甲山はアスレチックが楽しくて…
ルミナリエは、大学時代授業の後に見に行ったこともあります。六甲山は羊と戯れたり、アスレチックを見つけて遊んだりしました。丘の上の六甲枝垂れのきらめきは心に残っています。そして、夜景がきれいでした~。六甲山はあちらこちら動き回って探検気分も味わえる魅力的な場所です。
先輩からのメッセージ

最後に、科学館の学芸員は11人で女性は2人。西岡さんの先輩でもある西野藍子学芸員に一言いただきました。
「西岡さんは、何事にも素直に好奇心を持って取り組む人、という印象です。きっと小さい頃から科学が好きで、興味や関心があることには意欲的に挑戦されてきたのではないかな、と思っています。仕事ぶりはといいますと、マイペースにコツコツ着実に取り組んでいると思います。時にマイペースが過ぎて少々心配になることもありましたが笑。最近はさまざまな業務を通して経験を積み、頼もしくなったと感じることが増えました。今後は専門の気象分野で、ぜひ活動の幅を広げていってもらいたいですね。与えられた業務だけでなく、自身でイベントや展示を企画するなど、西岡さんのオリジナリティあふれた学芸活動を期待しています!」
先輩のメッセージからも科学館の雰囲気の良さが伝わってきました。これからの西岡さんのご活躍にますます期待です!