
今回のCheer*fullWomanインタビューでご紹介するのは、株式会社BeLiebe代表の志賀遙菜さんです。
社会の課題解決に取り組む女性起業家を応援するビジネスプラン発表会「LED関西」のファイナリスト10名に選ばれた志賀さん。女性の卵子数を計測する血液検査キット「EggU(エッグ)」を発表し、大きな反響を呼びました。「LED関西で、EggUについてお話させていただきたくて、ファイナリストに入りたかった。とてもうれしい」と喜びを語ります。そして働く女性に、自身の体と、未来に向き合うきっかけにしてもらえれば… という志賀さんにお話を伺いました。
あなたは、どのタイミングで子どもを授かりたいですか? 卵子数検査キット EggU

出典:JISART(日本生殖補助医療標準化機関)多施設共同研究での国内検討データ (http://www.city.gifu.med.or.jp/kensa/common/file/19-01.pdf)
あなたは将来、子どもを授かりたいですか?
どのタイミングで妊娠したいと思っていますか?
今や女性の社会進出が重要な時代。特に20代~30代はキャリアでも重要な時期であり、仕事に全力で取り組む人も多いと思います。しかしその頃は、女性の妊娠可能年齢とも大きく重なっています。
子どもは欲しいけど、昇進のチャンスを逃したくない。
子どもは、キャリアが落ち着いてからでも間に合うかな… ?
このように、モヤモヤした気持ちを抱える女性も多いものです。
女性は生まれながらに約200万個の卵子をもっているとされますが、その数は年齢と共に減少します。
妊娠を考えたときに、自分の体にどれくらいの卵子が残っているのでしょうか?
もちろん他にもさまざまな原因があるので一概にいえませんが、卵子数が少なければ、不妊治療などが必要になる可能性も高くなります。

卵子の数を知って、どうする?

――― 自分の体の状態を知るのは大切だと思います。しかし卵子の数を知ってどうするのか、よくイメージができません。EggUで検査した人からは、どのような感想が寄せられていますか?
まだ試作品の段階でしたが、10名の方に検査していただきました。
実は私も「あ。この程度の卵子が残っているんだ」など、感想で終わるだろうと予想していたのです。でも違いました。
検査後に結婚した人もいましたし、将来の人生設計についてパートナーと話し合った人、婦人科に行って病院でしかできない検査をし、体のケアに取り組み始めたという人もいました。
そもそも自分は子どもを望んでいるのかと、自身の気持ちと向き合う人もいましたね。
また、卵子凍結を本格的に考えた人もいました。費用対効果から、自分の卵子をいつ凍結するのがベストかと、具体的に調べて検討されていました。
これからの生き方を考えるきっかけが、EggUの価値

――― 検査を行ったみなさんは、とても行動的ですね!
おそらく検査をするまで、自身の妊娠や出産について具体的に考えておられなかったと思います。当然です。
でも自分の体に残された卵子の数といった、それまでぼんやりしていた情報の一つが明らかになったことで、何を優先したいのか、はっきり見えてきます。
つまり自分の体の「現在地」が見えるようになるのです。
予想以上のインパクトがあったのだと思います。だから具体的な行動を起こしたのでしょう。
仕事を中心にプランを立てるのは、そう難しくありません。周りにはロールモデルになるような、先輩社員もたくさんいますから。
自分の体を優先したプラン設計は個人差もありますし価値観にも左右されますから比較的難しいですが、今後はこういう視点も大事だと思っていますし、この視点がその人の人生を後悔の少ない方向に進めてくれるものと信じています。
そうした皆さんの行動を知り、私もEggUの開発は間違っていなかったと確信できました。
人生を考える、さらには生き方を考えるきっかけ作りが、EggUの価値だと思っています。
なぜEggUを作ったのか?

――― 自ら問題意識をもって開発までされたとは、すごいです。
2年前からアイデアは持っていました。
当時は就職して3、4年で、仕事もますますおもしろくなって。キャリアアップの一つに海外勤務があり、私も手を上げようと思いました。
でも自分の年齢を考えたとき、気づいたんです。
海外勤務期間はおよそ3年です。
帰国してから妊娠、出産と計算すると「あれ?私、高齢出産になる」って。
高齢出産や不妊治療などは知っていました。
でも急に自分ごととして意識したとき、女性はキャリアと共にこういうことも考えないといけないんだ、なんて不公平なんだって思ったんです。もちろん、男性だって同じ課題を感じている人はいるのですが、その時は感情的になって自分で自分に女性バイアスをかけていましたね(笑)
これは課題だ、何とかしたいと思ったものの、具体的にどうすればいいのかわかりません。
そこで大学や経済産業省が行っているプログラムに参加し、何もないところからアイデアを形にする方法を学びました。
特に経済産業省のプログラムでは、卵子数検査がどう役立つのか、意味がないのではといった厳しい指摘をバンバン受けました。そのたびにブラッシュアップして、頭の中のアイデアをEggUという形にすることができました。
卵子の数がわかったその先へ ニーズに応えてサービス充実

――― アイデアを形にするのも大変ですが、ビジネスにするにはもっと大変だと思います。
そのためにLED関西に応募しました。ここでは多くのサポーター企業や行政が、女性起業家を応援してくださるからです。
皆さんに自分の思いを伝えられれば、もしかしたら契約や協業のチャンスをいただけるかも知れない。
そうなればもっと世の中に広められます。
実際、35社の企業からお声がけいただきました。
「カラダ軸で考えるキャリアプラン」という切り口で、講演を依頼されることもあります。
体を軸にして考えるライフプランの中にキャリアを埋め込んでいく、という考え方は新しいし、興味深いですよね。
そこでもっと自分の体を知りたい方にEggUをご紹介すれば、実際のライフプランの設計に役立てていただけるのではないかと思っています。
――― 課題は見つかりましたか?
EggUが提供できるのは、「自分の人生を考えるきっかけ」です。
そのため、その後のアフターサービスやサポートサービスを充実させる必要があります。その部分がまだ不完全なので充実させていきたい。
例えば、不安を相談できるコミュニティづくりや専門家による悩み相談の場、情報発信の場づくりなどです。
――― 2021年に株式会社BeLiebeを設立されました。その中でどんどんサービスを広げるイメージでしょうか。
そうです。先ほど試作品で検査した皆さんのさまざまな行動をご紹介しましたが、本格化すれば、さらに多くの悩みや不安が出てくるでしょう。そうしたさまざまな声やニーズに対応できるサービスを着実に増やし、充実させていきたいと思います。
サポートサービスの充実が、BeLiebeの次のステップと考えています。
私は将来、女性や男性といった生物学的性差による不公平・バリアのない世の中を創りたいと思っています。
BeLiebeはそのために、これからもいろいろなモノやコトを作っていく。そんな未来を思い描いています。
クラウドファンディングで目標額の300%以上を達成!

キャリア女性向けの卵子数検査キット「EggU」を販売するため、5月24日にクラウドファンディングを開始。わずか20時間で目標金額の50万円を達成し、最終的には支援者数90名、総支援金額1,772,000円、サイト訪問者数:2,154名という内容でプロジェクトが成立しました。
約2ヵ月という短期間でこれだけの成果が出せたのも志賀さんの情熱とEggUのニーズの両方がそろっていたからではないでしょうか。

卵子数検査キット「EggU」なら、誰でも好きな時に気軽に採血・検査ができます。
卵子数を知るという体験が、自分の体を軸に、自身のキャリアプランやライフプランと向き合うきっかけになる、と志賀さん。
「EggUした?」
という会話が、いつの日か日常の中で当たり前になる社会を目指したい、と話す志賀さんの目が輝いて見えました。
阪神沿線でお気に入りの場所は?

最後に、阪神沿線でお気に入りの場所を伺いました。
「三宮から元町です。会社がその辺りにあるというのもありますが、海と山が近くて、ゆっくり歩いてショッピングやおいしいレストランにも行けます。メリケンパークは、お気に入りの場所ですね。広々していて海風が心地よくて、とてもリフレッシュできます」
これ!と思ったら突き進む情熱が原動力

本業もこなしながら、複業であるBeLiebeでのEggUにも大忙しの志賀さん。
でもご本人は、「BeLiebeは趣味であり生きがい」と笑顔で答えます。
小さい頃から研究者になりたい、難病患者を救いたいという思いを持っていた志賀さん。
しかも医者でも治せない未知の病をテーマに、大学では乳がんと難治性のウイルス性白血病を、大学院ではウイルス性の白血病の研究に取り組みました。
そのうち、一刻も早く患者を治したいという思いと、まずは論文で成果を出すという研究者とのギャップに悩みます。
ちょうどその頃、授業で「産学連携」とは、研究と社会とを隔てた大きな溝の架け橋であること。
そして研究成果を社会課題の解決のため応用し、展開することが使命だという話を聞きます。
共感した志賀さんはそれを機に、研究の世界からビジネスの世界へ転身するのです。
「これだ!と思ったら、突っ走ってしまうんです。冷静にならないと」と言いますが、その情熱こそがEggUを生み出したのでしょう。
くしゃっとした笑顔がとってもキュートな志賀さん。苦労してきたはずの道のりをとてもわかりやすく、軽やかに話してくださる姿に、心から応援したくなりました。
インタビュー/チアフルライター 國松珠実