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今もなお街角に残る戦争のイコン B29のおとしもの1945@深江

小さな営業所の一角にたたずむ謎の物体、その正体は

小さな営業所の一角にたたずむ謎の物体、その正体は

神戸在住のチアフルライター、やまさんです。

阪神深江駅を出て阪神高速3号線の高架をくぐり、深江大橋を渡ってすぐ、とある会社の敷地にこのちょっと変わったオブジェはあります。

「B29のおとしもの1945」と題されたこのオブジェが据えられているのは鋼材の販売・加工業などを営む小野建株式会社神戸営業所の一角。

この「おとしもの」に最も詳しい方だという社員の福田さんにお話を伺いました。

さかのぼること24年前。

鋼材の特約店・加工業を営んでいた灘鋼材株式会社(ナダコー)灘本店の鋼材倉庫(灘区記田町)が阪神淡路大震災で被災しました。

その建て替え工事中、地中から円盤状の金属片が掘り出されました。

調べたところ、どうやら焼夷弾の蓋(正確にはM69集束油脂焼夷弾の弾頭部のおもり)らしいことがわかりました。

ナダコーの社長さんは、もっと多くの人に知ってもらおうと、これを会社の入り口付近の人目につきやすい場所に展示することを思いつきます。

焼夷弾と神戸大空襲

焼夷弾と神戸大空襲

両サイドにぶら下がっている丸いものが焼夷弾の蓋。

支柱にうっすらと「灘鋼材」という文字が見えます。

第二次大戦下において、焼夷弾とは一般にアメリカ軍が日本の都市を空襲するために使用した爆弾を指します。

B25爆撃機から投下された親爆弾E46クラスター弾は高度約610mでスクリューが開き、中に結束されていた38個のM69子爆弾を空中にばら撒きます。

各子爆弾は信管を下に向けて落下し長さ約1mのストリーマと呼ばれる落下安定リボンを展開。

親爆弾を開くときに使用される爆薬が子爆弾に引火しストリーマにも着火します。

その様子はあたかも空から火の雨が降ってくるように見え、その様子はアニメ映画「火垂るの墓」にも描写されています(余談ですが、「火垂るの墓」というタイトルは昆虫のホタルと焼夷弾の降る様子「火垂る」とをかけたものだという説があります)。

焼夷弾は家屋の屋根や地面に着地すると中に収められていたゲル化ガソリンを燃やしつつ撒き散らし、周囲をたちまち火の海にしました。

焼夷弾の中でも特にM69焼夷弾は1945年2月の神戸大空襲を皮切りに木造家屋が密集している東京都、名古屋市、大阪市で大量に投下され、各都市部に大規模火災と多数の死者をもたらしました。

神戸市域における空襲は1945年1月3日から8月の終戦までの間に128回あり、これは東京の130回に次ぐ大規模なものでした。

なかでも2月4日の無差別焼夷弾爆撃、3月17日の兵庫区、林田区、葺合区などの神戸市西部、5月11日の灘区、武庫郡(現在の東灘区)、そして6月5日の須磨区から西宮市に渡っての広範囲爆撃により、神戸市のほぼ全土が壊滅状態、戦災家屋数14万1,983戸、罹災者53万858人、死者7,491人、負傷者1万7,002人を出す大惨禍となりました。

神戸大空襲について描かれた作品には、野坂昭如氏の小説『火垂るの墓』とその映画化作品のほか、妹尾河童氏の『少年H』、手塚治虫氏の『アドルフに告ぐ』、また最近復刊した西東三鬼氏の私小説『神戸・続神戸』などがあります。

引き継がれる事業と先代の遺産

引き継がれる事業と先代の遺産

道路側から見たところ
写真の左端、植え込みの向こう側に「おとしもの」が辛うじて見えます

ナダコーは2015年に廃業、ナダコーの事業はかねて取引のあった小野建の神戸営業所へ譲渡されることが決まりました。

同社の専務だった福田さんを含む15名の従業員は小野建へ移動となり、「B29のおとしもの1945」はそのまま元の場所に残されました。

今ではナダコー時代の従業員は福田さんのみになったため、この「おとしもの」の解説ができるのは福田さんだけになってしまったということです。

福田さんのお話によると、この奇妙な展示物に興味を持った各業界紙、ラジオ関西、サンテレビなどのメディアが取材に訪れ、また地元の小学生達が質問に来たり、クラス単位で見学に来たりしているそうです。

実はこの焼夷弾の弾頭と同じものが、阪神深江駅の近くにある神戸深江生活文化資料館にも展示されており、深江一帯にも当時大量の焼夷弾が投下されたことがわかります。

点と点がつながるとき、見えてくる74年前の神戸

戦時中のイコンが残されているのはここだけではありません。

実は繁華街三宮にもいくつか戦争の傷跡が残されています。

 

今もなお街角に残る戦争のイコン B29のおとしもの1945@深江

阪急神戸三宮駅ホームの屋根

阪急電車に乗る機会があったらホームの屋根を見上げてみてください。

あちこちに穴を塞いだ跡があります。

これは空襲の焼夷弾により開いたものだそう。

若い駅員さんに聞くと、詳細はわからないものの、数年前までは東口改札を入ったあたりにそのことについて説明された張り紙があったそうです。

 

今もなお街角に残る戦争のイコン B29のおとしもの1945@深江

 

今もなお街角に残る戦争のイコン B29のおとしもの1945@深江

JR三ノ宮駅高架橋梁の弾痕

JR三ノ宮駅と阪急神戸三宮駅を繋ぐ連絡橋を渡っていると、JRの高架の梁にこんな穴が何箇所か空いているのが見えます。

これは戦闘機による機銃掃射の弾痕。

去年この部分がグレーからブルーに塗り替えられたのですが、穴を補修していないところを見ると、JRさんが意図的にこの弾痕を残しているものと思われます。

厚さ数ミリはあろうかという鉄板がめくれ上がるような弾痕を見ていると、十分に当時の空襲の恐ろしさを想像することができます。

 

今もなお街角に残る戦争のイコン B29のおとしもの1945@深江

旧居留地・海岸ビルの壁の弾痕

壁面に点々と見えるシミのようなもの、これは機銃掃射の跡をふさいだものだそう。

ほかにも神戸市立博物館、神戸郵船ビル、商船三井ビルディング、海岸ビルヂング、エルメスにも同様の弾痕があるそうです。

GHQが占領直後の神戸市内を撮影した資料映像を見ると、空襲で爆撃を受けたビルは四角い外壁以外、ことごとく原型も残さないほど破壊されていましたが、居留地内のビルは壊滅的な破壊を免れたようです。

一説によると、終戦後GHQが駐留基地の施設として利用するために機銃掃射のみに留めたとか。

この他、生田神社にも焼夷弾で焼けた楠の切り株が飾られています。

因みに、駅員さんに尋ねたところ、阪神神戸三宮駅は元々地下にあったため全くの無傷で残ったそうです。

現在使われている駅の構内は、改装が施されているもののほぼ全て戦前からずっと使用されているものだとのことです。

こうやって町のあちこちに散らばる戦争の遺構を繋いでいくと、74年前の神戸の町並み家並みが徐々に浮かび上がってきます。

あらゆる町の片隅に

 現在、生け垣の枝が伸び、塗装が色あせたため、深江浜の道路沿いにひっそりとたたずむこのオブジェを見つけるのはちょっとむずかしいかもしれません。

ですが、気をつけてみると、私達が通り過ぎる何気ない風景の中に、この町に暮らす市井の人々のたどってきた歴史の欠片を発見することができます。

最近巷のあちこちで町歩きツアーが静かなブームになっています。

そういったツアーに参加してみると「この地域にはこんな面白いものがあったんだ」「この建物にはこんな由来があったのか」といった新しい発見がたくさんあり、ますます町歩きが楽しくなってきます。

皆さんも、普段何気なく通り過ぎている景色をもう一度よく見直してみませんか?

意外な「おとしもの」が見つかるかもしれませんよ。

【B29のおとしもの1945】
阪神深江駅から徒歩約10分 深江大橋を渡ってすぐ、進行方向に向かって左側

[参考]
鋼材新聞:小野建、神戸の特約店・ナダコーの鋼材事業継承(2015/02/04) https://www.japanmetaldaily.com/metal/2015/steel_news_20150204_5.html
ウィキペディア:神戸大空襲/M69焼夷弾
総務省:神戸市における戦災の状況(兵庫県)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/daijinkanbou/sensai/situation/state/kinki_07.html
昭和考古学とブログエッセイの旅:神戸の近代建築に残る戦争の痕
https://parupuntenobu.hatenablog.jp/entry/kobe-war-relic

文/チアフルライター やまさん
→ やまさんの過去の記事はこちら

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